強誘電体不揮発性メモリの信頼性向上に関する研究

 コンピュータなどでデータを記憶している装置(部品)のことを“記憶装置”といいます.この記憶装置は『高速で一時的な記憶』に適した半導体記憶素子(メモリ)と,低速で『恒久的な記憶(不揮発性)』ができるハードディスクやDVDなどのストレージとに分けることができます.現在のコンピュータには,中央演算装置(CPU)が直接情報のやり取りをするための1次記憶装置(主記憶装置)と,必要に応じて1次記憶装置に移し替えるデータを保存しておくための2次記憶装置(補助記憶装置)とがあり,多くの場合には1次記憶装置がメモリに,2次記憶装置がハードディスクなどに対応しています.(図1)


各種メモリ
図1 いろいろな記憶装置(左から順に,磁気コアメモリ,ハードディスク,メモリ)

 私たちがコンピュータを起動する際には,不揮発性であるハードディスクから必要な情報をメモリに記憶させるための動作が必要となり,また終了時にはメモリ上の必要な情報をハードディスクなどに必ず保存しなければなりません.そこで,もしも“不揮発性”と“高速性”という特徴を備えた記憶素子があれば,コンピュータの起動あるいは終了動作は,瞬時に終えることができるようになります.本研究室で注目している強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)は,このような“不揮発性”と“高速”を備えた理想的な記憶素子のひとつです.

 強誘電体と呼ばれる材料は,強磁性体,簡単にいえば『永久磁石』とよく似た性質を示します.磁石を使った記録媒体として一般的なのは,図2に示すような電車などの切符や図書カード,家電量販店などのポイントカードです.図3に模式的に示したように,これらのカードの中では『小さな磁石の向きを変える』ことで,情報を記憶しています.これと同じようなことができるのが強誘電体材料であり,この場合には『小さな電池の向きを変える』ことで情報を記憶します.


磁気カード
図2 いろいろと利用されている磁気カードの例

FeRAM説明
図3 強誘電体不揮発性メモリの原理

 強磁性体や強誘電体に共通していることは,『材料自身に記憶機能が備わっている』,つまり,強磁性体は永久磁石としての性質,強誘電体は電池としての性質を,それぞれもっているということです.強誘電体が示す電池としての性質(正確には自発分極)は,ペロブスカイト構造と呼ばれる結晶構造が原因となって現れ,電圧を加える向き(プラスとマイナス)によって,2つの安定な状態をとることができます.電気的な記憶であるため,半導体記憶素子と同じように高集積化ができ,また高速性と低消費電力性といった特徴から,すでにプレステーションや鉄道用ICカードなどに利用されています.

 しかし,実際には何度もデータを書き込むと特性が劣化してしまう“疲労”など,改善しなければならない課題が残されています.その中で私たちは,電極として利用される白金基板の熱的安定性の改善などに取り組んでいます.
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