プロトンビームによる極微構造の形成に関する研究

 普段,私たちが利用している携帯電話やゲーム機などには,コンデンサやトランジスタというような電子部品がたくさん使われています.例えばPlay Station 2などを分解すると,非常に複雑な導線が描かれた基板の上に,たくさんの電子部品が半田付けされていることが分かります.(図1)この複雑な導線のパターンをつくるためには,基板全面を覆っている銅箔の不要箇所を薬品で溶かす必要がありますが,そこで使われているのが『リソグラフィ』と呼ばれる技術です.(図2参照)

マザーボード拡大図

図1 コンピュータの電子回路基板


プリント基板 プリント基板
プリント基板 プリント基板

図2 プリント基板の作製工程(サブトラクティブ法)


 数千〜数億個のトランジスタなどを集積した『集積回路』の中(図3参照)にも,それぞれの部品を構成する材料や配線を形成するためにリソグラフィ技術が“何度も”繰り返して使われています.つまり,“この工程を簡略化”することができれば,電子回路や集積回路がもっと簡単に作れるようになるのです.

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図3 集積回路(i8086,4ミリ角の中に2万9千個のトランジスタが入っている)


 図2に示したリソグラフィの工程では,『フォトマスク』によって配線となる部分を隠して紫外線を照射することで,あらかじめ銅箔に塗られていた感光材料が分解し,現像液に溶けるような化学変化が起こります.しかし,光である紫外線は回折現象を示すため,あまり小さな加工には不向きです.そこで紫外線の代わりとして,電子やイオンなどのエネルギー粒子線が注目されるようになってきました.

 このようなエネルギー粒子線の方向は,電界や磁界によって簡単に変えることができるので,目標とする場所だけに照射することができます.つまり,『フォトマスク』を必要としない『マスクレス露光』が実現できます.電子線の場合,電子がとても軽いために感光材料の中をまっすぐに進むことができません.そこで私たちは,電子の2,000倍近く重たい陽子(プロトン)を使うことを提案しています.
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